可能性は等しく、その場にいた誰もにあったのだろう。直情的で不器用な愛ゆえに、命懸けで囮になったコルテスにも。臆病ながらも、友と愛娘を救うべく奮い立ったエルバーにも。ひょっとすると幼いアリタにさえ。その時村に居合わせた人々全てに。

  "選ばれた" のは、ジルだった。

  胸に大きな傷跡を持つ者。ドラゴンに心臓を奪われた者を人は "覚者" と、そう呼ぶ。奪われた心臓を取り戻すべく、ドラゴンに戦いを挑まねばならない。それがどういった意味を持つのか、本当のところを知る者はない。

  それが "竜の教義" なのだと、誰かが言った。
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