見つからぬよう開けた道を避け、草の茂った崖から砂浜に下りると、最も手近な物陰へと身を隠す。冷静だとは言え、額に汗がにじむのを抑えられるものではない。フゥ…と一息吐くと、二人の位置を確認し、ドラゴンの様子を盗み見る。
何かを待つように辺りを睥睨しながら、時折思い出したように長い尻尾を振り回し岩を抉る。
(村に踏み入るつもりは無い…?何しに来たんだ??)
不可解なものを感じつつ、するすると瓦礫伝いに移動する。やがて二人とお互いに目視できる位置まで来ると、エルバーもジルに気付いたようだ。(来るな!戻れ!!)と声には出さず口の動きと身振りで伝えてくる。それには構わず、ドラゴンの目が離れたのを確認すると、一息に二人の元まで走り、滑り込むように小舟の陰に入った。
「バカ!何で来たんだ!」
「何でって…アリタを助けないと、でしょ?」
エルバーは、一瞬言葉を詰まらせると、気を失っているらしい愛娘に目を遣る。
「……すまん。」
「…エルバー、怪我は?アリタをおぶれる?」
「ああ、大丈夫だ…メリンを見たか?」
「うん。無事だよ。マイラと一緒だと思う。」
そうか、よかった…と、エルバーは首だけを伸ばすようにしてドラゴンを見る。気丈に振舞ってはいるが、その表情にはありありと恐怖が浮かんでいた。(無理もないな…)そう思うジルとて、先程からずっと表情は固いままだ。
「コルテスは」
気掛かりを口に出そうとして、喉の奥がひりつくような緊張に気付く。答えが返ってくるのが恐いのだ。自分でもよく解らない初めて経験する感情。。そうか…と得心すると同時に昨夜の出来事が思い起こされる。
("コルテスならいい"んじゃない…私は"コルテスがいい"んだ…)
そんなジルの感情を知ってか知らずか、エルバーはこちらに向き直り、ジルの口からわずかに漏れた言葉を察して答える。
「…わからん。なにしろ砂やら海水やら撒きあがって視界が遮られちまってたし、自分達の事だけで精一杯だったからな…」
そのとき…何か途轍もなく重たいものが宙を舞うような音。と、殆ど同時に強烈な衝撃波が襲い、思わずその場に倒れ込む。
数秒、閉じてしまった目を開け、恐る恐る体を起こして振り返ると、ジルが先程隠れ進んできた瓦礫の山がすっかり薙ぎ払われてしまっていた。ドラゴンが、その尾を振るったのだ。
かろうじて、今潜んでいる小舟は無事のようだが、心臓が早鐘を打つように鳴っているのが体の外にまで漏れ聴こえそうだ。荒くなった息を抑えながらも、ドラゴンの様子を伺おうと小舟の影から顔だけを出して…ギクリとする。
ドラゴンは、こちらを見ている。それも、始めからお見通しだとでも言うように。
(いつから…??まさか、ずっと気付いてたのか…?だとしたら、何故、襲ってこない?)
ドラゴンはまるで、これからこちらがどうするのか、興味深げに見守っている風だった。
「……待ってる?」
何かを待つように辺りを睥睨しながら、時折思い出したように長い尻尾を振り回し岩を抉る。
(村に踏み入るつもりは無い…?何しに来たんだ??)
不可解なものを感じつつ、するすると瓦礫伝いに移動する。やがて二人とお互いに目視できる位置まで来ると、エルバーもジルに気付いたようだ。(来るな!戻れ!!)と声には出さず口の動きと身振りで伝えてくる。それには構わず、ドラゴンの目が離れたのを確認すると、一息に二人の元まで走り、滑り込むように小舟の陰に入った。
「バカ!何で来たんだ!」
「何でって…アリタを助けないと、でしょ?」
エルバーは、一瞬言葉を詰まらせると、気を失っているらしい愛娘に目を遣る。
「……すまん。」
「…エルバー、怪我は?アリタをおぶれる?」
「ああ、大丈夫だ…メリンを見たか?」
「うん。無事だよ。マイラと一緒だと思う。」
そうか、よかった…と、エルバーは首だけを伸ばすようにしてドラゴンを見る。気丈に振舞ってはいるが、その表情にはありありと恐怖が浮かんでいた。(無理もないな…)そう思うジルとて、先程からずっと表情は固いままだ。
「コルテスは」
気掛かりを口に出そうとして、喉の奥がひりつくような緊張に気付く。答えが返ってくるのが恐いのだ。自分でもよく解らない初めて経験する感情。。そうか…と得心すると同時に昨夜の出来事が思い起こされる。
("コルテスならいい"んじゃない…私は"コルテスがいい"んだ…)
そんなジルの感情を知ってか知らずか、エルバーはこちらに向き直り、ジルの口からわずかに漏れた言葉を察して答える。
「…わからん。なにしろ砂やら海水やら撒きあがって視界が遮られちまってたし、自分達の事だけで精一杯だったからな…」
そのとき…何か途轍もなく重たいものが宙を舞うような音。と、殆ど同時に強烈な衝撃波が襲い、思わずその場に倒れ込む。
数秒、閉じてしまった目を開け、恐る恐る体を起こして振り返ると、ジルが先程隠れ進んできた瓦礫の山がすっかり薙ぎ払われてしまっていた。ドラゴンが、その尾を振るったのだ。
かろうじて、今潜んでいる小舟は無事のようだが、心臓が早鐘を打つように鳴っているのが体の外にまで漏れ聴こえそうだ。荒くなった息を抑えながらも、ドラゴンの様子を伺おうと小舟の影から顔だけを出して…ギクリとする。
ドラゴンは、こちらを見ている。それも、始めからお見通しだとでも言うように。
(いつから…??まさか、ずっと気付いてたのか…?だとしたら、何故、襲ってこない?)
ドラゴンはまるで、これからこちらがどうするのか、興味深げに見守っている風だった。
「……待ってる?」
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